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A grace brewer who loves grapes, grace wines and families~ポテンシャルはあるのに越えられないと言われた甲州ワインが克服した壁~(世界に認められるまで)

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世界最大のワインコンクールであるデキャンタ・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)にて、中央葡萄酒株式会社が醸造した「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が日本ワイン初の金賞を受賞したのが2014年。その前年には、その醸造に使用した日本固有のブドウ品種である「甲州」に奇跡が起きていた。ポテンシャルのあるDNAを持ちながら、越えられないと言われた糖度20度の壁を克服し、世界に認められたのだ。

そのブドウを作り出した三澤彩奈さん(現:栽培醸造責任者)がワイン醸造家として家業に入るときに父であり社長である三澤茂計さんが言ったのは、「地獄へようこそ」という言葉だった。そこから始めた切磋琢磨により、越えられないと言われた壁を越えた奇跡を書いた、「日本のワインで奇跡を起こす」を紹介する。


日本のワインで奇跡を起こす――山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで

  • 当時の甲州の課題
  • 甲州のポテンシャル
  • 潮の変わり目
  • 更に可能性を広げた三澤彩奈さん
  • 人と人との繋がり
  • 奇跡を起こしたブドウ栽培
  • 賞受賞
  • まとめ
  • 造りたいワイン
  • こんなワインも :グレイスロゼ
  • 最後に

1.当時の甲州の課題


●今もそうであるが、まだ日本のワイン自体、世界的にあまり知られておらず、甲州もやはり、あまり知られていなかった

●甲州は、ヨーロッパのブドウに比べて糖度が低く、酸も少なめだった。
ワインのアルコール度数の強さはブドウの糖度の高さに比例。アルコール度数が低いと味が弱々しく、印象もあいまいになる。それを補うために、従来は、当たり前のように補糖されていた。

ワインの出来を決めるのは8割がブドウ2割が醸造技術。しかし、ブドウ栽培は収益性が低く採算が合わないため、ブドウの生産者と醸造家とは別であり、ブドウ生産者は果実を商品としているので、お互い目指すブドウは全く逆のものだった。(ワインは粒が小さく、酸味もあるものが必要とされる)
●棚栽培が主流であり、ブドウ生産者は、収穫量や収益性を考えると変えたくなかった。

●デュブルデュー教授の甲州に対する指摘。
収穫量を制限してブドウの濃縮度を高める栽培法を確立する必要がある。

2.甲州のポテンシャル


★甲州とは・・「甲州」という名前のワインは「甲州」という品種のブドウから作られた白ワイン。発祥はカスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方。ワイン専用のブドウ品種であり、シルクロードを通って中国大陸を渡り日本へたどり着いた。


●DNAを調べると、糖度が高く、酸がしっかりしている系統のブドウであった。(十分素質のあるブドウ)
●甲州の繊細さ、上品さ、日本料理との相性の良さは他の品種にない。
やはり、同じ産地のワインと料理は合う

3.潮の変わり目

甲州にとって、強い逆風が吹き荒れる状態であったが、少しづつ追い風が吹き始める。

●2004年7月 甲州ワインプロジェクト発足。
●2004年10月 パーカーポイント取得で、アメリカ輸出開始。
●2007年マスターオブワイン協会のリン・シェリフ会長に甲州の国際戦略のコンサル要請。
●2010年甲州が O.I.V.(国際ブドウ・ワイン機構) に品種登録され、英国への輸出を開始。

4.更に可能性を広げた三澤彩奈さん


●甲州の可能性を感じさせる出来事。
2002年にマレーシアでグレイス甲州のプロモーションイベントを父(茂計さん)が開催、彩奈さんが付き添った。旅行でそのホテルに宿泊していたご夫婦がグレイス甲州をたまたま飲んで3日間同じレストランに通い詰め毎晩1本空けたほど気に入り、「このワインは味もラベルもボトルも全てが日本らしい」と絶賛だった。この夫婦のおかげで、甲州の魅力を再発見し、可能性を感じた彩奈さんは人生を甲州に懸けてみようと決心した。

●2008年からフライングワインメーカーとして、一年中、北半球/南半球を飛び回り醸造について学び続けた。ニュージーランド、オーストラリア、チリ、アルゼンチン、南アフリカなど6年間。行動力と吸収力人とのつながり、ワインへの愛情など、ものすごいエネルギーを感じる。

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5.人と人との繋がり


●幼い彩奈さんにとって、祖父と父の姿を見てきたことで、仕事に対する姿勢は自然に教わった。このことから家族がキーとなり、父と同じ職業に付けて嬉しかったとしている。


●デュブルデュー教授、ハンター教授との出会い。
デュブルデュー教授から、科学に裏付けされた醸造学などを学ぶ。
ハンター教授からは、後に奇跡を起こすきっかけとなる、リッジシステム(高畝式)を学ぶ。


●他にも、2005年にフランスのボルドー大学へ留学した時に学んだ、「収穫のタイミングは醸造家がブドウを食べて判断する」という言葉に衝撃を受ける。
当時、山梨では醸造者は、収穫期を決めることはできなかった


●醸造の違いを知りたい、甲州の垣根栽培のヒントを見つけたいという思いからフライングワインメーカーとして、飛び回ったときも、オーストラリアでは、海外輸出のきっかけとなる、代理店「クオリティー・エステート・ディストリビューターズ」を紹介してくれた、アンドリュー。
フライングワインメーカーとは、夏から秋は日本でワインを仕込み、春になると季節が逆になる南半球のワイン産地に行って現地のワイナリーで働いて修行する。

6.奇跡を起こしたブドウ栽培


ここで、ブドウの生産の話をする。ワインの出来を決めるのは8割がブドウと言われる中、満足のいくワインを造るために、自分たちでブドウ作ることに挑戦する。

●棚栽培から垣根栽培へ
棚栽培は1本の樹に対して500房以上の実がなる。しかし、垣根栽培にすると、10房から20房に制限される。ブドウの房の数が少なくなるのだから、ブドウの凝縮度もあがるはずであった。

しかし甲州の特徴で、成長が著しくなることで、花がつかずに結実しなかった
棚栽培は藤棚のような感じで頭上にブドウの房が垂れ下がるような栽培方々で、垣根栽培は、生垣に這わせて枝を成長させる栽培方法。

●糖度20度の克服
ブドウによってワインの出来が決まってしまうといわれながら、甲州のぶどうの実力として当時は、評価が低く、垣根栽培で結実する房数を減らして濃縮度を上げているはずなのに、何故か糖度が上がらなかった

しかし、南アフリカのコブス・ハンター教授にアドバイス頂いたリッジシステム(高畝式)を採用して7年目に糖度20度の壁を克服

2013年には、枝変わりした糖度25度の房が現れた。何やら、自然変異したとのこと。求めていたものかが分かるまで最低でも5年。新たな品質を持つ甲州の生まれる確率は4~5万粒にひとつという気の遠くなる作業と時間の中からの収穫。

高畝式で栽培したブドウやワインの成分分析と評価結果の論文。
垣根仕立て栽培による’甲州’ブドウ及びワインの品質特性

7.賞受賞


2013年 デキャンター・アジア・ワイン・アワード(Decanter Asia Wine Awards)にて、「グレイス グリド甲州2012」がアジア初の金賞及びリージョナルトロフィーを受賞
2014年 世界最大のワインコンクールデキャンター・アジア・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards)にて、「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が日本ワイン初の金賞及びリージョナルトロフィーを受賞

8.まとめ

課題対策結果
甲州の認知度は低かった。ワインコンクールへの参加。
海外輸出。
2013年 DAWA 金賞受賞
2014年 DWWA 金賞受賞
甲州の糖度は低かった。(自然変異)糖度25度達成
ブドウの収穫時期を醸造者が決められなかった醸造者が自分で栽培するワイン生産量の2割分のブドウを自社の畑で生産
収穫量を制限してブドウの濃縮度を高める栽培法を確立する必要がある。リッジシステム(高畝式)
垣根栽培の確立

9.造りたいワイン


奇跡を起こした、三澤彩奈さんが次に求めるテーマは「熟成」「熟成する辛口甲州」をめざしたい。
「地獄へようこそ」という言葉のとおり、入社当時は、苦労の連続。今でも、手塩にかけて育てたワインが台風に見舞われるときは辛いが、クオリティを追求し続けたいという欲求は途絶えることがない。

10.こんなワインも :グレイスロゼ


三澤農場産の赤ワイン用ブドウで造られた辛口ワイン。
赤ワイン用のブドウでありながら、白ワインの繊細さを持つ。また、樽発酵の複雑味も持ち合わせたワイン。


グレイスロゼ2018

11.最後に

甲州がワインには適さないと言われながら、奇跡が起こったのは、三澤彩奈さんが、「何をするよりも、ワイン造りが好き!」という純粋な気持ちを持っていたからかも知れません。他にも、世界を一人で飛び回る行動力、家族や社員への思い、人と人とのつながりを大切にし、海外や仲間から仕入れた生の知識を有効活用したいという、学ぶ気持ちとそれを使って何かを作り出す力は、彼女にしかできないことかも知れません。好きなことに携わりながら、挑戦し続けられているのはうらやましくも思います。

またもちろん、社長であり父である三澤茂計さんが会社を導いたことも奇跡が起きた原因と思います。
2004年の甲州ワインプロジェクトに参画や幅広い人脈を通してデュブルデュー教授のコンサルを得たこと。後にマスターオブワイン協会の会長に就任するリン氏に世界戦略を相談したこと。これが、ロンドン進出に繋がります。

私がこの本を紹介しようと思ったのは、自分でも、もっとワインを知りたい、身近に感じたいと思ったからであり、ワインの作法や奥深く、幅広い知識の他に、作っている人の顔が見えるとワインの味わいも変わるかな?と思ったからです。正直、まだワインを味わえるところまで行っていませんが、少しづつ積み重ねていけば、もっと美味しいワインが飲めるんちゃうかと、思いながら、またひとつ新しいことを覚えていっています。日本のワインも、もっと応援したいですしね。

熟成する辛口甲州も楽しみです。つづく


日本のワインで奇跡を起こす――山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで


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