今回は、十勝ワインと十勝について紹介します。十勝ワインは北海道、池田町で日本初の自治体ワイナリーです。現在も町直営で経営しています。正式な会社名は「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」ですが、「十勝ワイン」と呼ぶのが一般的です。今回は、自治体のプロジェクトX的な運営の話です。

十勝ワイン アムレンシス [ 赤ワイン 12 ミディアムフルボディ 日本 北海道 720ml 瓶 ボックス無し]
・逆境からの再起と進化し続ける池田町
・冷涼な土地柄を利点に本物づくり
・中学の学校行事でワインづくり
・池田町、現在の課題と体験型観光の実施例
・十勝ワインの紹介
まず、十勝ワインのおおまかな歴史についてまとめられておられますので、ご覧ください。(倍速で6~7分です)
北海道にあるのワイナリー(余市部除く)の地図です。

1.逆境からの再起。
十勝沖地震から国際ワインコンテストで銅メダル
十勝ワインは日本初の自治体ワイナリーです。現在も町直営で経営しています。歴史的には昭和27年に第1次十勝沖地震が池田町を襲い、さらに翌年からの2年連続の冷害が遅いました。この苦境からの脱却として、「ブドウ栽培」と「ワイン製造」への道が生まれたのです。
山ブドウはなぜ
昭和32年冷害や地震で財政の苦しかった池田町に、38歳の町長(丸谷金保氏)が誕生しました。町長は行動力を発揮して昭和35年に農村青年と共に果物のある農村づくりを目指して「ブドウ愛好会」を結成。
数十品種類の苗木約5千本を自費で購入し、栽培を開始。しかし、寒さのためほとんどが枯れてしまいました。しかし昭和37年に農産物加工研究所を設立し、山ブドウがなぜ枯れないのか、品種がアムレンシスでは、と調査を始めました。これが、変化点のひとつとなります。
ブドウ研究が行われていた旧ソ連ハバロフスク極東農業研究所で、池田町に自生する山ブドウが良質のワインになるアムレンシス亜系と断定されたことが、ワインづくりに勢いを与えました。
コンテスト銅賞
その後、果実酒製造免許が認められ、その試作品が昭和39年8月にハンガリーの国際ワインコンテストで銅メダルを受賞。日本でワインがほとんど飲まれていなかった時代に、1,000年を超える歴史を持つ本場ヨーロッパから認められたのです。これで一気に求めるブドウは醸造用へと方向が定まり、昭和41年十勝ワイン、十勝ブランデーのブランドで販売が始まりました。

ワインの受賞からの観光産業の始まり
山ブドウの成功だけにとどまらず、十勝ワインの大きな目的であるブドウ栽培による「農業振興」を目指しました。
その後、74年にはワイン城が完成しました。概観がヨーロッパ中世期の古城に似ていることでワイン城と呼ばれ、年間60万人以上の観光客が押し寄せるほどの観光名所でした。
1970年代、WIN-WINの仕組み
当時の肉食は豚や鶏が中心だったこともあり、ワイン城のレストランで、まずは農家自身による牛肉消費を促進していこうという狙いから、レストランに農家から一部の牛を提供してもらい、その代わりに無料券が配られ、レストランで牛肉を食べることができました。さらに、ハンバーグなどの加工品として農家に還元、一方、農家は町に牛の内臓を寄付することで、町はこれを学校給食やレストランで利用するという仕組みとなっていました。
その後、行われたワイン祭りは、ワイン・牛肉の飲み食べ放題で、半分以上が札幌圏からの参加でした。また、祭りの日には、地元のタクシー業者が潤うという波及効果があり、現在もNPO法人ワインクラスター北海道のワイナリーを訪ねるタクシープランに引き継がれています。

体験型観光への移行(2000年ごろ)
観光形態の変化により観光産業も、現在もいくつかの課題を抱えています。ワイン城の入場者数は減少傾向にあり、ワイン祭りも大々的なワイン祭りは、秋期の年1回のみとなっています。
変化する情勢
また、民間企業でも羊毛工芸の工房やアウトドアスクール、熱気球など、各種の体験メニューや施設が新たに作られ、こうした体験型観光を目的に町内を訪問する人々が徐々に見受けられるようになってきました。
⇒そして、このことが現在の池田町の観光産業を見直す一つのきっかけとなっていき、体験型観光への移行が始まります。
十勝のポテンシャル
「農業」を活用した体験・滞在型ツーリズムの推進としたアンケートで108人中、十勝・帯広を旅行先に選んだ理由は、「名物や地元料理を食べたくて」が 74名(68.5%)、続いて「自然景観を楽しみたくて」が 63 名(58.3%)(複数回答)あることから、観光客の十勝への期待としては、やはり、地元料理や自然(食・風景・気候風土)が考えられます。

2.冷涼な土地柄を利点に本物づくり。
ブドウ作りにむいた池田町の風土
・日照時間が長い
・ブドウの成熟期は昼夜の寒暖差が大きい → ブドウの糖度が上がる
・寒さにより酸味のあるブドウができる。
という特徴があります。
一方、課題としては :寒すぎる
・冬は-20度を下回り、乾燥した冷たい風が吹き付けます。
→ブドウの覆いとなるように冬の前に土を被せ、春になるとブドウを掘り出してやらなくてはなりません。
掘り出す作業は農家にとっては、かなりの負担です。
木を傷つけることもあり、
・寒さに強いでブドウを品種改良し、寒冷地でもできる栽培方法を研究開発が必要です。
山ブドウ(アムレンシス)は耐寒性が強くマイナス35度まで耐えられる種類がありこれを交配する研究が進められてきました。
品種について :山ブドウをメインに酸味のあるワインを
●清見の栽培
清見はフランスのブルゴーニュ地方で造られるピノ・ノアールを彷彿とさせる香り・北国ならではの豊かな酸味と味わいのある、赤ワインです。
苗木を土の中に埋め込んで越冬。秋に土に埋めたり春に掘り起こすなどの作業が必要。
⇒農家に負担がかかっていました。
●清舞は、この点を改良
清見と山ブドウの交配種。清美由来の色合いと風味。軽快な酸味が特徴。
⇒非常に寒さに強い品種で、土のなかでなくても越冬が可能。
●山幸は成熟する期間が長く、十分に糖度が高い
同じく、清見と山ブドウの交配でつくられました。山ブドウの豊かな酸が醸し出す、野性味あふれる赤ワイン。
⇒寒さにも強く、作業性も改善。
樽の特徴 :樽の良さとは
・フレンチオーク(フランス産のオーク樽)で熟成。
・効果としてフレンチオークからワインへ樽由来の成分や香り、色合いがうつり、おいしい味わいがある。
樽由来の、焼き立てのパンやバニラなどの複雑な風味を感じられものもある。
・熟成する樽は、ワイン城の地下にある熟成室。
清見の開発物語 :品種改良の大変さと清美を産んだマインド
ブドウの木は、1000本に一本の割合で突然変異を起こし、たくましく実をつける「枝変わり」があるといいます。5シーズンかけて枝梢の登熟が良く、果房も密着で豊産性の赤ワイン品種「清見」を誕生させました。
「焦らず、慌てず、諦めず」を合言葉に試行錯誤を繰り返し、清見を誕生させたのです。清見は北海道十勝の短い夏でもみのり、熟してくれるブドウでこれをワインにすると、フルーティーな味わいになります。清見は成熟期間が短く、ブドウの生育に適した温度帯で90日程度で糖度がのり、成熟します。通常のワイン用ブドウは約120日間必要だと言われていますから、熟すための期間が約ひと月短くて済む早生品種です。
十勝の良さ
北海道運輸局が調べた十勝の良さとして自然や食材が上げらる中、十勝の人の人柄を、北海道の中でも特におおらかな気風で優しい性格。生まれつきのホスピタリティーにあふれる人間性で来訪者を受け入れるという分析結果もありました。
3.中学の学校行事でワインづくり。
中学のときに学校行事でブドウの収穫体験を行います。その摘み取ったブドウでつくったワインを、彼らが成人式を迎えたとき、記念品としてプレゼントされています。
4.池田町、現在の課題と体験型観光の実施例。
●地域・小規模事業者の現状と課題
池田町商工会がまとめた、経営発達支援計画。
実施期間は、平成27年4月1日~平成32年3月31日。
周辺の人口が減っていることと、郊外大型店、帯広近郊へお客さんが流出していると報告。
小規模事業者に限った課題としては、魅力ある新商品、新サービスが必要とのこと。
「池田町に行ってみたい。池田町でしか体験できない。池田町の物だから買う。池田町に住みたい。池田町で創業したい。」を支援していくという内容である。
●十勝の旅行者に対するアンケート分析と体験型観光の提案
北海道運輸 局がまとめた、「農業」を活用した体験・滞在型ツーリズムの推進~十勝の魅力は「農」にあり~に係わる調査業務 事業報告書 。(平成 28 年)
体験・滞在型の観光として、サイクルツーリズム事業(自転車を自らこいで観光地を周る)などを提案。
●ワインツーリズム
NPO法人ワインクラスター北海道のワイナリーでは、ワインツーリズムも行われています。(以下、現在の状況から、実施されているかは必要時に都度、ご確認下さい)
●ワイン城の紹介
上で紹介しました、ワイン城は2019年の10月から内装のリニューアルで休館していましたが、2020年6月20日にリニューアルオープンしました。

また、1日3回無料ガイドツアーがあります。11:30、13:30、14:30(所要時間30分)。
地下樽熟成室、1階ショッピングエリア、4階レストラン。入場無料の施設1種類の無料ワインも用意。
池田町はドリカムの吉田美和さんの故郷で、曲の中に出てくる場所とリンクされています。池田町の思い出の場所とか。ドリカムの曲と一緒に池田町を巡るのも楽しそうです。
参考にさせて頂いたHP
● 北海道池田町 十勝ワイン(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
● ワインづくりが生んだ観光産業とその後
● 北海道池田町/「十勝ワイン」自治体経営のワイナリー
● 一般社団法人 北海道中小企業家同友会 【67号 特集1】十勝ワイン百年創成 過去・現在・未来 ー池田町の観光戦略の変遷-
5.十勝ワインの紹介。
清舞
清見はフランスのブルゴーニュ地方で造られるピノ・ノアールを彷彿とさせる香り・北国ならではの豊かな酸味と味わいのある、赤ワインです。

十勝ワイン 清舞 [ 2017 赤ワイン ミディアムライト 日本 720ml ]
ツバイゲルト
果実香のある香り、ほど良い酸味とやわらかなタンニンのバランスが良く、優雅な味わいのワインです。

十勝ワイン ツバイゲルト 特別醸造 [ 2017 赤ワイン ミディアムライト 日本 720ml ]
山幸(やまさち)
山幸は山ブドウと土、茎、根菜類の香りがします。ワインの良さを引き出すために、同じような香りの食材を加えることでさらなる魅力に変わります。例えば、牛肉に春菊・ごぼう・長芋を付け合せる。できれば、十勝の牛肉と十勝の春菊なら、同じ土地の組合せで「ハッピーワイン選び」にもありましたように、美味しい組合せ、「5つの同じ」のひとつになります。

十勝ワイン 山幸 ハーフ [ 2011 赤ワイン ミディアムボディ 日本 360ml ]
アムレンシス
この上なく、山ブドウの特長を引き継ぐ交配品種から造られ、草木系の果実香と力強い酸味、野趣溢れる味わいが特長のワインです。

十勝ワイン アムレンシス [ 赤ワイン 12 ミディアムフルボディ 日本 北海道 720ml 瓶 ボックス無し]
大変、長い文章でしたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。日本ワインは多くの県で逆境を乗り越えてきた歴史があり、調べると勇気をもらえます。また、最近のワイン消費量の増加に伴い、皆さんの努力が報われ急激に発展し、同時に課題もあることが分かってきた状態と思います。ワインを飲む我々も、参加して生産者と一緒により良くしていける時代でもあると思います。そのためにも、ワインをたくさん味わったり、ワインの知識を得てコミュニケーション取れるようにしていきたいです。つづく。